「今夜も気づいたら3時間、商品を探していた」という悩み
個人輸入ビジネスを始めて一番つらいのは、実は仕入れ作業そのものではありません。「何を仕入れるか」を決めるまでのリサーチです。
- 海外サイトを何十ページも見て、気になる商品をメモする
- 日本での販売価格や売れ行きを調べる
- 送料・関税・手数料を引いて利益を計算する
- 調べ終わってから「これ、日本では輸入規制の対象だった」と気づく
この繰り返しで、1日が終わってしまう方は多いはずです。私もEC運営を16年以上続けてきましたが、リサーチの沼にハマる感覚はよくわかります。Amazon、メルカリShops、eBay、Shopify、Shopeeと複数のプラットフォームで売ってきたので、「調べて、比べて、計算して、判断する」作業を数え切れないほど繰り返してきました。
この記事では、ChatGPTなどのAIに「売れる商品リスト」の下ごしらえをさせる方法を紹介します。これでリサーチ時間が月20時間ほど短くなった理由を、実務の流れに沿って説明します。高額なツールは必要ありません。読み終えたときには、今日から自分のリサーチにAIを組み込む手順がわかるはずです。
先にお断りしておくと、「月20時間」は私のケースでの概算です。商材や作業のやり方で変わりますので、あくまで目安として読んでください。
結論:AIに「当てさせる」のではなく「ふるいにかけさせる」

先に結論をお伝えします。
AIに「売れる商品を教えて」と聞いても、まず当たりません。うまくいく使い方は、自分が集めたデータをAIに渡し、自分の判断基準で候補を絞り込ませることです。
ChatGPTに「個人輸入で売れる商品は?」と聞くと、それらしい答えが返ってきます。ただ、AIは今この瞬間の相場や在庫、競合の価格をリアルタイムで正確に把握しているわけではありません。AIが自信満々に出す答えには、事実と違う内容(いわゆる「ハルシネーション」、もっともらしい嘘)が混じることがあります。
一方で、AIは次の作業が得意です。
- 大量のデータを、決まったルールで並べ替える・仕分ける
- 条件に合わないものを機械的に除外する
- 計算とチェックを、疲れずに何百行でも繰り返す
- バラバラな情報を、同じフォーマットの表にそろえる
つまり、「商品を見つける」のではなく、「集めた候補を、自分の基準でふるいにかける」ところをAIに任せます。人間がやるのは「基準を決めること」と「最後の判断」だけです。このスタイルなら、有料のリサーチツールを契約しなくても、普段のAIの無料プランや低価格プランで始められます(料金や機能は変動するため、執筆時点の情報として各サービスの公式ページをご確認ください)。
なぜリサーチ時間が月20時間も減るのか

減る理由は「AIが賢いから」ではありません。人間がやっていた「機械的な作業」が、リサーチ時間の大半を占めていたからです。
リサーチ時間の中身を分解してみる
私の感覚での内訳は、おおよそ次のとおりです(週あたりの概算)。
- 候補の拾い出し・メモ書き:約2〜3時間 → 約1時間
- 日本での販売価格・売れ行きの確認と転記:約2時間 → 約1時間
- 送料・関税・手数料を含めた利益計算:約1〜2時間 → 約15分
- 規制・知財(商標など)・梱包サイズなどの事前チェック:約1時間 → 約30分
合計すると、週に6〜8時間かかっていた作業が2〜3時間ほどになります。4週間で割り戻すと、月20時間前後の差になる計算です。
注目してほしいのは、減ったのが「考える時間」ではなく「写す・計算する・見比べる時間」だという点です。商品選びの勘所は人間の仕事のまま残り、そこに集中できるようになった、というのが実感です。
実店舗の経験でも同じことが起きた
これは輸入ビジネスに限った話ではありません。私はトレーディングカード・コレクティブルの実店舗も経営していて、買取価格や在庫の相場チェックにAIを使っています。以前は、相場を一枚ずつ調べては手書きやExcelに写す作業に、毎週かなりの時間を取られていました。
今は、集めた相場データをAIに渡して「前回から値動きが大きいものだけ抜き出して」と頼むだけです。「人が見るべき数件」だけが手元に残るので、判断に使える時間が増えました。個人輸入のリサーチも、仕組みはまったく同じです。
実践ステップ1:「自分の勝ちパターン」を言葉にする

最初にやるのは、AIへの質問ではなく、自分の判断基準を書き出すことです。ここが曖昧だと、AIも曖昧な答えしか返せません。
書き出す基準の例
- 仕入れ価格の上限(例:1点あたり〇〇円以下)
- 最低でほしい利益額と利益率
- サイズ・重さの上限(国際送料が跳ね上がらないため)
- 避けたいジャンル(薬機法、食品、電気製品など規制が絡むもの)
- 避けたい商品(ブランドの偽物リスクが高い、バッテリーを含むなど)
- 日本での販売先(Amazon、メルカリShops、自社Shopifyなど)
私がeBay輸出でやってきたことを振り返ると、売れたときの共通点は「この商品なら勝てる」という自分なりの型が先にあったことでした。型がないままリサーチすると、見るものすべてが魅力的に見えて、時間だけが溶けます。
基準づくりをAIに手伝ってもらう
自分の基準がうまく言葉にならない場合は、AIに「インタビュー」してもらうのがおすすめです。
あなたは個人輸入ビジネスのリサーチ設計をサポートする相談役です。 私が仕入れ商品を選ぶための「判断基準シート」を作りたいので、 1問ずつ質問して、私の条件を引き出してください。 全部で8問程度、私が答えるたびに次の質問をしてください。 最後に、回答をもとに「仕入れ判断基準」を箇条書きでまとめてください。
10分ほど答えるだけで、判断基準が文章として手元に残ります。この文章が、以降のステップでAIに渡す「ものさし」になります。
実践ステップ2:データは自分で集め、整理と採点をAIに任せる
次に、候補商品のデータを集めます。ここが一番大切なポイントで、AIの頭の中の知識ではなく、自分が実際に見た数字を渡すのが鉄則です。
集めるデータの例
- 海外サイトの販売価格・送料・在庫状況
- 日本での売れている価格帯(Amazonの価格推移、メルカリの売り切れ済み商品、ヤフオクの落札相場など)
- 競合出品者の数
- 商品のサイズ・重量
価格推移を見るツールや、各種マーケットプレイスの検索機能を使うと効率的です。ツールの料金や機能は変わりやすいため、導入前に公式の最新情報を確認してください。
集めたデータは、スプレッドシートに「商品名・仕入れ価格・日本での売値・重さ・競合数」のように並べます。きれいに整える必要はありません。コピーして貼り付けた生データでも、AIが整形してくれます。
AIに採点させるプロンプト例
以下は、私が個人輸入で仕入れを検討している商品の一覧です。 【判断基準】 (ステップ1で作った基準をここに貼る) 【計算条件】 ・為替レート:1ドル=〇〇円(私が確認した数字) ・国際送料:重さ〇kgまで〇円(私が確認した数字) ・関税・消費税:仮に仕入れ価格の〇%で試算 ・販売手数料:〇% 【商品一覧】 (スプレッドシートからコピーした表を貼る) やってほしいこと: 1. 各商品の想定利益と利益率を計算する 2. 判断基準に合わない商品は「除外」とし、理由を一言書く 3. 残った商品を、おすすめ度の高い順に並べる 4. 各商品について「人間が最終確認すべきポイント」を一つ挙げる 5. 結果を表形式で出力する
ここで重要なのは、為替・送料・手数料の数字を自分で確認した値として渡すことです。AIに「適当な送料で計算して」と任せると、現実とずれた利益が出てしまいます。
私が意識している「AIに渡さない」もの
お客様の個人情報や、取引先とのやり取りの内容、自社の細かい売上数字などは、AIに入力しません。リサーチに必要なのは「商品の数字」だけなので、困ることはありません。ビジネスで使う場合は、利用するAIサービスのデータの取り扱い設定(入力内容が学習に使われるかどうか)も、一度確認しておくと安心です。
実践ステップ3:「除外ルール」をAIに徹底させる
リサーチで一番怖いのは、「利益が出そう」と思って仕入れた商品が、実は売れないもの・売ってはいけないものだったという失敗です。AIには、利益計算より先に「地雷を除く」役割を担ってもらいます。
除外チェックの観点
- 法規制の可能性:化粧品・サプリ・医薬品に近いもの(薬機法)、食品(食品衛生法)、電気製品(PSEマークや技適)、ワシントン条約関連など
- 知的財産のリスク:ブランド名や商標、キャラクターグッズなど、並行輸入の扱いが微妙になりうるもの
- モール側の出品制限:Amazonなどの出品制限カテゴリ、禁止商品
- 物流リスク:大型・重量物、破損しやすいもの、リチウム電池内蔵品
以下の商品一覧について、日本で販売する前に確認が必要な 「規制・知財・出品制限・物流上のリスク」の可能性を、 商品ごとに「高/中/低」で判定してください。 ただし、あなたの判断は参考情報であり断定はできません。 「どの点を、どこで確認すべきか(税関、各省庁、モールの規約など)」 も一緒に書いてください。
ここで大切なのは、AIの判定を「答え」ではなく「確認すべき項目の洗い出し」として使うことです。法律や規約は改正されますし、AIの知識が古い、もしくは間違っている可能性もあります。最終的な確認は、税関・各省庁・モールの公式情報、必要に応じて専門家に行ってください。
「個人輸入」と「事業としての輸入」は別物
もう一つ大事なことがあります。個人が自分で使うために輸入する「個人輸入」と、販売目的で輸入する場合では、必要な手続きや適用される制度が異なります。たとえば、個人使用を前提にした関税や免税の特例が、販売目的では使えないケースがあります。また、商品によっては、販売のために許可や届出が必要です。
私自身は中古品を実際に仕入れて販売するスタイルで、古物商許可を取って運営しています。ジャンルごとに必要な許認可は違うので、「何を扱うか」が決まったら、先に管轄の窓口や専門家に確認するのが、結局いちばん近道です。
実践ステップ4:週1回のルーティンに落とし込む
ここまでの流れを毎回ゼロから考えていては、効率化になりません。最後に、プロンプトとデータの置き場所を固定して、週1回の作業にするのがポイントです。
私が使っている週次ルーティンのイメージ
- 月曜:候補データを集める(30分〜1時間)。気になった商品をスプレッドシートに貼るだけにとどめる
- 月曜:保存しておいたプロンプトにデータを貼り、AIに採点・除外判定をさせる(10〜15分)
- 火曜:残った上位候補だけを、人間の目で一つずつ確認する(商品ページ、レビュー、規制、競合の実態)
- 水曜:仕入れ判断。少量テスト仕入れから始める
- 翌週:売れ行きの結果をAIに共有し、「次の基準の改善点」を一緒に考える
特に5番目が効きます。売れた商品・売れなかった商品の特徴をAIに渡して「判断基準のどこがズレていたか」を分析してもらうと、基準そのものが少しずつ賢くなります。リサーチが「毎回ゼロからの作業」から「育てていく仕組み」に変わるので、時間短縮の効果が続きます。
プロンプトは「使い回せる形」で保存する
効率化の成否は、プロンプトの使い回しで決まります。メモアプリやスプレッドシートに、次のように保存しておくと便利です。
- 判断基準シート(月に1回見直す)
- 採点用プロンプト(数字の部分だけ差し替える)
- 除外チェック用プロンプト
- 振り返り用プロンプト
ChatGPTの現行モデルはGPT-5系ですが、サービスの仕様は頻繁に変わります。「このモデルでないとダメ」という書き方ではなく、「どのAIでも通じる、基準と手順を明確にした指示」にしておくと、サービスが変わっても使い続けられます。
地方の小さな店・個人事業主にこそ向いている理由
「AIでリサーチなんて、大きな会社の話では?」と思う方もいるかもしれません。私は反対だと考えています。
小さな事業ほど、リサーチも仕入れ判断も、経営者本人が一人でやっています。1日の中でリサーチに使える時間は限られ、本業の接客や梱包、発送の合間にやることになります。だからこそ、「機械的な作業」を減らす効果が大きく出ます。
私が運営している実店舗でも、店頭POPや商品説明文の作成、相場チェック、シフト管理、スタッフへの指示書づくりなど、日々の業務にAIを入れています。どれも「特別なシステム」ではなく、ChatGPTのような一般的なツールに、自分の言葉で指示を出しているだけです。大げさな設備投資は要りません。
「うちのような小さな店には関係ない」と思っている方ほど、最初の1時間の使い方次第で、翌月から使える時間が大きく変わります。
注意点:AIのリサーチで失敗しないために
便利な反面、使い方を間違えると大きな損失につながります。次の点は必ず守ってください。
1. 最終判断は必ず人間がする
AIが「利益率が高い」と出した商品でも、実際には在庫が不安定だったり、偽物が多く出回っていたり、レビューが操作されていたりすることがあります。リストの上位に入った商品も、必ず自分の目で商品ページ・出品者の評価・レビュー・競合の状況を確認してください。
2. 数字はAIに推測させない
為替、送料、関税率、手数料率は、AIに「だいたいこのくらい」と言わせず、公式サイトや見積もりで確認した数字を自分で入れてください。計算ミスの原因の大半は、前提となる数字のズレです。
3. 法規制・知財は「確認のきっかけ」として使う
先ほどの除外チェックは、見落としを減らす補助にすぎません。AIが「低リスク」と判定したから安全、という使い方は危険です。販売前には、税関・関係省庁・モールの規約などの一次情報を必ず確認してください。
4. 個人情報・機密情報は入力しない
顧客の氏名や住所、取引先の情報、非公開の仕入れ先条件などは、AIに入力しないのが基本です。リサーチに必要なのは商品の情報と数字だけなので、それで十分です。
5. いきなり大量に仕入れない
AIで効率化できるのは「調べる時間」であって、「売れる確実性」ではありません。最初は少量のテスト仕入れで、実際の売れ行きを確認してから拡大してください。この慎重さが、在庫リスクを抑える一番の方法です。
6. 情報は常に変わる
AIサービスの機能・料金や、各国の輸入規制・関税制度は変わります。この記事の内容も執筆時点のものです。実際に導入するときは、必ず最新の公式情報を確認してください。
まとめ:リサーチを「作業」から「仕組み」に変えよう
最後に、要点を振り返ります。
- AIに「売れる商品を教えて」と聞いても当たらない。集めたデータを、自分の基準でふるいにかけさせるのが正しい使い方
- 時間が減るのは、AIが賢いからではなく、「写す・計算する・見比べる」という機械的な作業が、リサーチ時間の大半を占めていたから(私の場合、概算で月20時間前後)
- 手順は4つ。①自分の判断基準を言語化する ②データは自分で集め、整理と採点をAIに任せる ③規制や知財などの除外チェックをさせる ④週1回のルーティンにして、結果を振り返りながら基準を育てる
- 数字は自分で確認し、最終判断は人間が行う。個人情報は入れない。最初は少量のテスト仕入れから
最初の一歩として、今日10分だけ使って、「自分の仕入れ判断基準」を箇条書きで書き出してみてください。それをAIに渡して「この基準で、これらの商品を採点して」と頼むだけで、リサーチの景色が変わります。
「自分の商材だと、どんな基準を作ればいい?」「データの集め方や、プロンプトの組み立て方を一緒に考えてほしい」という方は、お気軽にご相談ください。EC運営16年以上の経験と、実店舗でのAI活用の実践をもとに、あなたの事業に合った形での導入をお手伝いします。
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